| ■ パニック障害 〜激しい発作と恐怖感〜 | Date: 2004-02-17 (Tue) |
今回は不安障害の中で、とても特徴的な症状を示すパニック障害を取り上げます。パニック障害は突然、心臓がドキドキする、呼吸が苦しくなる、激しいめまいがするなどの自律神経系の嵐のような身体症状とともに、激しい不安を中心とする神経症状が発作的に発現する病気です。このままでは死んでしまうのではと激しい不安を訴え、救急車で病院に運ばれることがよくありますが、心電図検査やMRI検査画像検査などの検査では異常が見られません。内科の医師からは当初、狭心症などの心臓疾患を疑われるのですが、検査では異常が見つからず、自律神経失調症、心身症、心臓神経症、過呼吸症候群などと判断されることが多いようです。もっとも、つい最近まで、神経科の教科書でも不安神経症と分類され、神経分析などの精神療法の対象とされていたために、いまだ混乱した状況にあるように思われます。
今から四十年ほど前に米国の精神科医クラインが、当時「不安・恐怖反応」と診断していた一群の患者に、うつ病に効果があることが見い出されたばかりのイミプラミンを投与したところ、激しい不安発作が劇的に消失したことから、新しい症候群としてのパニック障害が日の目を見ることになったのです。1980年には米国の精神医学会の分類に採用され、広く認知されるようになったわけです。
かつては、精神療法のみが治療法と考えられていた不安精神賞の中で特徴的な症状を示す一群の疾患が、坑うつ剤薬で治療可能な病態であることが明らかになってきたのです。
パニック発作はある一定の時間に、激しい恐怖感や不安感とともに次のような身体症状が四つ以上出現します。
(1)心臓がどきどきする(2)ひどく汗をかく(3)身体が震える(4)呼吸が苦しい(5)息が詰まる(6)旨の不快感(7)吐き気(8)めまい、ふらつき(9)現実感がない(10)狂うと思う(11)死ぬと恐れる(12)しびれ感(13)寒気、ほてり
これらの症状は10分以内にピークに達します。約20分以内に症状が消えることが多いのですが、時には半日も持続することがあります。
パニック障害がはじめて起きてから、次の発作が起きるまでの時間は様々で、多くは一週間以内に二回目の発作が起こります。だんだん発作が出現しやすくなり、つきに八回以上になることが多いようです。
パニック障害を一度でも経験すると、命の危険をひしひしと感じ、発作に対する恐怖感は計り知れません。発作は突然出現することが多いので、またいつかこの恐ろしい発作が起こるのではと、常に不安感をもち続けることになります。この症候を予期不安と言いますが、パニック障害ではほとんどの症例で出現します。
また、パニック障害では多くの症例で広場恐怖をともないます。広場恐怖とはパニック発作が起こることを恐れ、助けが求められない場所や逃げ出すことが出来ない場所にいることを不安に感じたり、そのような場所を避ける状態です。
飛行機や地下鉄などの乗り物やトンネル、エレベーターなどの狭い、閉ざされた空間、美容院、歯科医、スーパーのレジの行列などでパニック発作が出現することが多く、そのような場所をひどく恐れるようになります。
パニック障害は脳内のセロトニンやノルアドレナリン神経系のネットワークの不調によって発現すると考えられています。したがって、その治療はこれらの神経系を調整する薬物によって効果がもらたされます。治療の基本はパニック発作を完全に消失させることですが、薬物だけでは不十分なことがあります。広場恐怖には段階的に恐れている場所を自ら体験する療法(エクスポージャー)が効果を示します。パニック障害は症状発現後なるべく早期に専門医によって治療を受けることが必要です。治療までの期間があまり長くなると治療効果が不十分でいわゆる難治例となることがあるからです。
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